
下血(黒色便・血便)
下血(黒色便・血便)
下血(黒色便・血便)は、消化管(胃腸)からの出血が原因となることが多く、中には胃がん・大腸がん、胃・十二指腸潰瘍や潰瘍性大腸炎などの重大な病気が潜んでいる可能性もあります。下血(黒色便・血便)を自覚された方は、早めの受診をおすすめします。
尼崎市の阪急塚口駅前いのうえ消化器内科・内視鏡クリニックでは、消化器病専門医が常駐し、下血(黒色便・血便)の診療を毎日行っています。当院では、胃カメラ・大腸カメラ検査に加え、CT検査や院内血液検査装置も完備しており、下血(黒色便・血便)に対する幅広いアプローチが可能です。
下血とは、消化管からの出血が便として排出される状態を指し、便の色調により、「黒色便(タール便)」と「血便(鮮血〜暗赤色の便)」に分けられます。
黒色便は、主に上部消化管(食道・胃・十二指腸)からの出血によって生じます。胃酸の作用で血液中の鉄分が酸化され、黒く変色するため、便がタールのような色になります。
一方、血便は小腸から肛門までの下部消化管からの出血が原因です。胃酸の影響を受けず、出血した血液がそのまま排出されるため、鮮やかな赤色〜暗赤色の便になります。
下血は、出血量や原因疾患によっては命に関わることもあります。黒色便が続く、あるいは鮮やかな血便が繰り返しみられる場合には、速やかに消化器内科を受診し、内視鏡などによる検査を受けることが重要です。
黒色便は上部消化管(食道・胃・十二指腸)からの出血が原因で生じます。代表的な原因疾患は以下の通りです。
胃や十二指腸に発生する悪性腫瘍です。腫瘍が進行すると表面の血管が破れ、出血を引き起こすことがあります。胃酸によって血液が酸化されるため、黒色便として現れることが多くなります。
胃や十二指腸の粘膜が深く傷ついて潰瘍を形成し、血管が露出・破れて出血する病気です。主な原因にはピロリ菌感染やNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の使用があり、慢性化や再発も多い疾患です。
ストレスや薬剤(特にNSAIDs)、アルコール、感染症などの刺激で、胃粘膜が急激に障害を受け、びらんや浅い潰瘍を形成して出血する状態です。大量出血に至ることもあり、急な黒色便の原因となります。
胃の出口付近(前庭部)において、毛細血管が異常に拡張し、慢性的または断続的に出血する病気です。肝硬変などに伴うこともあり、内視鏡で特徴的な縞模様(スイカ胃)が見られることがあります。
肝硬変などで門脈圧が高くなると、食道や胃の静脈がこぶ状に膨らむ(静脈瘤)ことがあります。これが破裂すると大量出血をきたし、黒色便や吐血として現れます。命に関わる緊急疾患です。
嘔吐や咳などによる強い腹圧で、食道と胃の境目の粘膜が裂けて出血する病気です。比較的若年者にも起こりやすく、黒色便や吐血の原因となります。
血便は下部消化管(小腸・大腸・直腸・肛門)からの出血によって生じます。代表的な原因疾患は以下の通りです。
大腸や小腸にできる悪性腫瘍です。がんの表面が潰瘍化したり、びらんを伴うことで出血し、血便の原因となります。特に進行がんでは、持続的な血便や貧血を伴うことがあります。
大腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍が生じる自己免疫性の腸疾患です。血便や粘液便、腹痛、下痢などの症状が繰り返されます。長期的には大腸がんのリスクが上昇するため、定期的な内視鏡検査が重要です。
腸への血流が一時的に低下することで、腸粘膜に炎症や潰瘍が起こる疾患です。高齢者や動脈硬化のある方に多く、左下腹部の痛みと血便が典型的な症状です。多くの場合は安静と点滴で改善します。
大腸の壁にできた憩室(ポケット状のくぼみ)から出血する状態です。突然の鮮血便で発症することが多く、出血量が多い場合には緊急処置や入院が必要となることもあります。
粘膜下の毛細血管が異常に拡張し、慢性的または断続的に出血する病気です。加齢に伴って増加し、高齢者で血便の原因となることがあります。内視鏡で治療可能なこともあります。
直腸や肛門の静脈がうっ血してこぶ状に腫れる状態で、排便時に鮮血が見られることが多いです。痛みを伴う場合もあり、最も一般的な血便の原因です。
細菌やウイルスによって腸が感染し、炎症を起こすことで血便が出現します。多くの場合は下痢、発熱、腹痛を伴い、食中毒や集団感染として発症することもあります。
下血(黒色便・血便)は、消化管のどこかで出血が起きているサインであり、放置すると重大な疾患が見逃される可能性があります。なかには緊急対応が必要な疾患も含まれており、正確な診断と迅速な治療が求められます。
当院では、消化器病専門医が下血の診療を担当し、内視鏡検査をはじめとした専門的な検査を通じて、出血の原因を的確に特定し、患者様お一人おひとりに最適な治療をご提案いたします。
以下の流れで診療を行います。
1
問診
黒色便か血便か、出現のタイミングや頻度、便の色調や量、発熱や腹痛の有無、既往歴や薬の使用状況(特にNSAIDsや抗凝固薬)などを詳しくお伺いします。問診によって、出血部位や原因疾患の絞り込みを行います。
2
触診などの身体診察
腹部の圧痛などを確認し、原因となる腸管の部分の特定と疾患の絞り込みを行います。必要に応じて直腸診や肛門鏡検査で出血の色調や量などの状況評価も行います。
3
血液検査
出血の程度を把握するための貧血(ヘモグロビン値)や炎症の有無(白血球数・CRP)、肝機能・腎機能・出血傾向の有無などを確認します。
4
内視鏡検査・画像検査(必要に応じて実施)
出血の原因を特定するために、以下のような検査を症状に応じて選択します。
5
診断と治療方針の決定
検査結果に基づいて、出血の原因を診断し、適切な治療方針をご提案します。出血量が多い、または手術や入院が必要な病態が判明した場合には、速やかに専門医療機関への紹介を行います。
6
フォローアップ
治療後も再出血のリスク評価や原因疾患の再発予防のために、継続的な経過観察と生活指導を行います。特に潰瘍や炎症性腸疾患などでは、長期的な管理が重要となります。