
下痢
下痢
下痢は、消化管(胃腸)の消化・吸収機能の低下や感染症・自己免疫による腸管の炎症が原因となることが多く、潰瘍性大腸炎やクローン病などの重大な病気が潜んでいる可能性もあります。持続する下痢を自覚された方は、早めの受診をおすすめします。
尼崎市の阪急塚口駅前いのうえ消化器内科・内視鏡クリニックでは、消化器病専門医が常駐し、下痢の診療を毎日行っています。当院では、大腸カメラ検査に加え、CT検査や院内血液検査装置も完備しており、下痢に対する幅広いアプローチが可能です。
下痢とは、通常よりも水分の多い便が排泄される状態を指します。便の回数が増えたり、便が水様になったりすることが特徴で、多くの方が一度は経験する症状です。多くは一過性の軽いもので自然に治まりますが、なかには注意が必要な病気が潜んでいることもあります。
下痢を引き起こす原因にはさまざまなものがありますが、以下によく見られる原因を挙げ、それぞれの特徴をご紹介します。
ウイルスや細菌、寄生虫などの感染によって腸に炎症が起き、急激な下痢や腹痛、発熱、嘔吐などを引き起こします。ノロウイルスやサルモネラ菌、カンピロバクターなどが代表的です。飲食による「食中毒」も含まれます。ウイルスが原因の場合、多くは数日で自然に改善しますが、細菌が原因の場合は抗生物質の投与が有効であるケースもあります。脱水症状に注意が必要です。
大腸カメラ検査などの検査で異常が見つからないにもかかわらず、腹痛や下痢・便秘などの症状が繰り返される疾患です。ストレスや不安が引き金となることが多く、腸の過敏な反応が関与しています。「下痢型」「便秘型」「混合型」などに分類され、生活指導や薬物治療で改善を図ります。近年では腸内細菌叢の異常が原因となっている可能性も指摘されており、腸内細菌の発育を抑える「低FODMAP食」を用いた食事療法の有効性が報告されています。
大腸の粘膜に慢性的な炎症が起きる自己免疫性の病気で、下痢・血便・腹痛を繰り返します。症状が軽い時期(寛解期)と強くなる時期(再燃期)を繰り返すのが特徴です。難病指定されており、専門的な管理が必要です。自然に治癒することは稀であり、放置することで重症化すると手術が必要になるケースもあるので、早期の診断と治療開始が鍵となります。
口から肛門まで、消化管のあらゆる部位に炎症が起きる病気です。下痢や腹痛、発熱、体重減少などがみられます。若年者に多く、腸管が狭くなる「狭窄」や腸の外につながる「瘻孔(ろうこう)」を形成することもあります。
ある特定の食品を摂取したときに、腸が過敏に反応して下痢を引き起こすことがあります。たとえば「乳糖不耐症」では、牛乳などに含まれる乳糖を分解できずに下痢や腹部膨満感が生じます。特定の食品を避けることで症状は改善します。
薬の副作用として下痢が起こることがあります。特に抗生物質(腸内細菌のバランスが崩れる)、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、降圧薬のオルメサルタンなどが知られています。薬の中止や変更で改善することがあります。
代謝を活発にするホルモンである「甲状腺ホルモン」が過剰に分泌されることで、腸の動きが過剰になり、下痢が生じます。動悸や体重減少、発汗などの症状を伴うことが多く、ホルモン値の確認が必要です。
アレルギー反応の一種で、腸の粘膜に好酸球という白血球が集まり、炎症や下痢を引き起こします。血液検査や内視鏡での組織検査によって診断されます。ステロイド治療などが必要になる場合があります。
胆のうや胆管から分泌される「胆汁」が腸に過剰に流れ込むことで腸を刺激し、下痢を引き起こします。胆のう摘出後や腸の一部切除後に起こることがあります。コレスチラミンなどの薬で改善が期待できます。
糖尿病や膵臓の病気、膠原病、腫瘍、放射線治療後などでも下痢が生じることがあります。また、ストレスや睡眠不足などの生活習慣も影響するため、背景にある全身状態を考慮することが重要です。
下痢が長引く場合や血便、発熱、体重減少などの症状を伴う場合には、放置せずに早めにご相談ください。専門的な検査により、原因の特定と適切な治療をご案内いたします。
下痢の多くは一時的で自然に改善しますが、なかには重大な病気が隠れていたり、放置することで命に関わるケースもあります。次のような症状がある場合は、「様子を見る」のではなく、できるだけ早く医療機関を受診してください。
下痢は、多くの方が経験する身近な症状ですが、感染症から炎症性腸疾患、内分泌異常や薬剤の副作用に至るまで、さまざまな原因が考えられます。なかには長引く慢性下痢や、発熱・血便を伴う重篤な疾患もあり、適切な鑑別診断が求められます。
当院では、消化器病専門医が下痢の診療を担当し、問診・身体診察に加え、血液検査、内視鏡検査、CT、便培養検査などを通じて原因を的確に特定し、患者様一人ひとりに合わせた治療をご提案いたします。
以下の流れで診療を行います。
1
問診
下痢の回数や便の性状(粘液・血液の有無など)、発症時期、持続期間、食事や薬との関係、発熱や腹痛の有無、渡航歴などを丁寧にお伺いします。問診により、感染性・薬剤性・機能性などの可能性を絞り込んでいきます。
2
触診などの身体診察
腹部全体の圧痛の有無、腸の動き(蠕動音)、腹部膨満などを確認します。
3
血液検査
白血球数やCRPなどで炎症の有無を確認するほか、貧血、電解質バランス、肝・腎機能、甲状腺ホルモン値などもチェックし、全身状態を把握します。好酸球の増加があれば好酸球性腸炎などを疑います。
4
内視鏡検査・画像検査・便培養検査(必要に応じて実施)
5
便培養検査
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診断と治療方針の決定
検査結果をもとに下痢の原因を診断し、それぞれに応じた治療を行います。感染性であれば整腸剤や抗菌薬を、炎症性腸疾患であれば抗炎症薬や免疫調整薬を使用するなど、疾患に応じた対応をいたします。緊急性が高い場合には、速やかに専門医療機関への紹介を行います。
7
フォローアップ
症状改善後も再発予防や生活指導を行い、必要に応じて追加検査を実施します。過敏性腸症候群や炎症性腸疾患では、継続的な経過観察とサポートが重要です。