
尼崎市の阪急塚口駅前いのうえ消化器内科・内視鏡クリニックです。
2025年、『Clinical Gastroenterology and Hepatology』誌に掲載された最新研究では、スマートフォンで便潜血検査(FIT)を行う新たな方法が紹介され、大きな注目を集めています。
便潜血検査とは?
便潜血検査(FIT)とは、便の中に混じっている目に見えない微量の血液を検出する検査です。これは、大腸がんや大腸ポリープなどの出血を伴う疾患を早期に発見する目的で行われるもので、日本でも大腸がん検診の中心的な方法として広く普及しています。
検査方法は簡便で、自宅で便を採取して提出するだけ。出血している場合に陽性となるため、無症状でも疾患が潜んでいる可能性を早期に察知できます。
ただし、この検査は「スクリーニング(ふるい分け)」の役割を担っており、陽性であっても必ずしもがんがあるとは限らず、逆に出血のないがんやポリープは検出できないという限界もあるため、精密検査としての大腸カメラが重要となります。
スマホでがん検診?未来をひらく“夢の技術”
この研究は、ドイツのBLITZ試験に基づいたもので、従来の便潜血検査と比較して、スマートフォンで読み取る簡易型FIT(スマホFIT)の精度や実用性が検証されました。
- ・対象者:約650人
- ・進行前がん病変の検出感度:スマホFIT 28%、従来型FIT 34%
- ・特異度は92%と両群で一致
このように、スマホによるスクリーニングでも一定の精度が得られる可能性が示され、将来的には「自宅で簡単に受けられる大腸がん検診」への道が開かれるかもしれません。
あくまで研究段階。実用化にはまだ時間が必要
とはいえ、この技術は現在まだ研究段階であり、日本での保険適用や実臨床での導入には多くの課題が残されています。
特に:
- ・実生活での使用精度の確立
- ・スマートフォンやアプリの操作に慣れていない方への対応
- ・結果の正確な読み取りと医療機関との連携
といった点が今後の検討課題です。
陽性反応が出たら、必ず大腸カメラを
便潜血検査は、あくまでスクリーニング検査であり、陽性反応が出た場合は大腸カメラによる精密検査が必要です。
当院では、苦痛の少ない大腸カメラ検査を提供しており、鎮静剤の使用や炭酸ガス送気を取り入れて、患者さんの負担を最小限に抑えています。
まとめ|検診の未来に向けて
スマートフォンを使った便潜血検査は、「忙しい人」「医療機関に行くのが難しい人」でも自宅で検診を受けられる未来の選択肢として、非常に夢のある取り組みです。
ただし、現時点ではまだ実用化には至っておらず、便潜血検査を含めた現在の検診制度の中では、精密検査としての大腸カメラの役割は変わりません。
少しでも気になる症状がある方、または便潜血検査で陽性となった方は、ぜひ当院までご相談ください。