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尼崎市・塚口の阪急塚口駅前いのうえ消化器内科・内視鏡クリニックです。
「食道がんはお酒やたばこが強い人の病気」と思われがちですが、飲酒・喫煙の習慣がない女性にも食道扁平上皮がん(ESCC)が発生することがあります。
当院院長は大阪国際がんセンター在籍時に、こうした“リスクの少ない患者さん”に生じた表在型ESCCの内視鏡的特徴をまとめて国際誌に発表しました。本稿では、まず食道がんの基礎知識から、低リスク群における内視鏡所見、そして発生メカニズムの考察まで、わかりやすく解説します。
◆ 食道がんの疫学と病理型
食道がんは大きく扁平上皮がん(ESCC)と腺癌に分けられます。日本を含むアジアでは90%以上がESCCで、欧米では胃食道逆流症に関連する腺癌が増えています。ESCCの代表的なリスクは以下の通りです。
- ■ 男性であること
- ■ 飲酒(特に多量飲酒、フラッシング体質)
- ■ 喫煙
とはいえ、女性・非飲酒・非喫煙の方でも食道扁平上皮がんが起こり得ます。問題は、こうした方では「自分は低リスク」と考えて受診や検査が遅れ、早期発見の機会を逃してしまう可能性があることです。
◆ 低リスク群でも起こるESCC:院長らの研究から
院長(井上)らは、女性・非飲酒・非喫煙という「非常に低リスク」と定義される患者群に生じた表在型ESCCの内視鏡的特徴を、リスクを有する患者群と比較検討しました(症例対照研究、単施設)。
論文リンク:Endoscopic Features of Superficial Esophageal SCC in Very-Low-Risk Patients
研究の要点(やさしく)
- ■ 対象:表在型ESCC 666例から抽出した「非常に低リスク群」34例と、リスクあり群170例(1:5の症例対照設計)
- ■ 主要評価:内視鏡所見・背景粘膜・治療成績の比較
- ■ 結果の骨子:腫瘍サイズ・部位・深達度など全般は大差なし。ただし低リスク群に特有の所見が判明
低リスク群で目立った内視鏡的特徴
- ■ 白色角化付着(endoscopic keratinization):病変表面に白い角化上皮が付着する所見が高頻度(低リスク群 73.5% vs リスクあり群 27.6%)
- ■ 縦走性(longitudinal lesion):長軸方向に伸びる形状が多い(82.4% vs 53.5%)
- ■ 二つの所見を同時に満たす病変が顕著(61.8% vs 17.6%)
- ■ 位置は中部食道・後壁に多い傾向
- ■ 多くは粘膜内病変で、早期発見の可能性が高い
- ■ 背景粘膜ではルゴール不染(LVL)が少ない(LVL grade Aが多い)
なお、内視鏡で見られる「白色角化付着」は病理学的にパラケラトーシス(不全角化)と対応していました。これは低リスク群に特徴的な“手がかり”となり得ます。
◆ なぜリスクが乏しくてもESCCが起こるのか?(考察)
研究結果や既報から、以下の可能性が示唆されています。
- ■ 発がん経路の違い:飲酒・喫煙に関連した“多発不染(LVL)を背景とする経路”とは異なる、別系統の発がんが低リスク群で働いている可能性。
- ■ 遺伝学的素因:家族歴や性ホルモン環境など、素因性の関与を示唆する報告。
- ■ 炎症の関与(逆流・機械刺激):
低リスク群に特徴的な縦走性+白色角化付着は、食道炎を背景とする病変成立を示唆。持続する逆流や食物の停滞による局所刺激が、角化・上皮再生の異常を通じて発がんに関与している可能性。 - ■ 未測定の環境要因:高温飲料、栄養不足、基礎疾患(アカラシア等)など、隠れたリスクが一部に存在する可能性。
まとめると、飲酒・喫煙に依存しない別の発がん経路が確かに存在し、内視鏡では白色角化を伴う縦走病変として現れやすい――これが低リスク群ESCCの“見逃さないためのヒント”です。
◆ 早期発見の鍵:胃カメラでの食道の精密観察
食道がんは症状に乏しく、進行が速いことがあります。
胃カメラ検査では、白色光に加えてNBI拡大観察やルゴール染色を組み合わせ、白色角化付着(パラケラトーシス)や縦走性といった微妙な手がかりを丁寧に拾い上げます。
飲酒・喫煙の有無に関わらず、つかえ感、胸の違和感、慢性的な胸やけがあればご相談ください。
◆ 当院の強み
- ■ 院長は京都大学医学部附属病院・大阪国際がんセンターで多数の食道がん症例を経験し、食道内視鏡診療のエキスパートです。
- ■ 本稿で紹介した低リスク群ESCCの内視鏡的特徴に関する研究を主著として発表しています。
論文:Endoscopic Features of Superficial Esophageal SCC in Very-Low-Risk Patients - ■ 痛みや不快感を抑える鎮静下の胃カメラにも対応し、精密観察と早期発見まで一貫して行います。
◆ 受診の目安
- ■ 飲酒・喫煙習慣はないが、のど・胸の違和感が続く
- ■ つかえ感・嚥下痛・体重減少などの症状がある
- ■ 胃食道逆流症や食道炎を繰り返している
- ■ 家族に食道がんの方がいる、またはがんが心配
まとめ|低リスクでも「ゼロリスク」ではない。手がかりは“白色角化+縦走性”
食道扁平上皮がんは男性・飲酒・喫煙でリスクが高まりますが、女性・非飲酒・非喫煙でも起こり得ます。
低リスク群では白色角化付着を伴う縦走病変が特徴的で、中部食道・後壁に多く、粘膜内の早期病変として見つかる可能性があります。
「自分はリスクが低いから…」と放置せず、胃カメラによる詳細な食道観察で早期発見を目指しましょう。
◆ 関連ページ
食道・胃の精密検査には胃カメラが有効です。
→ 当院の胃カメラ検査
便通異常や出血がある場合は大腸カメラもご検討ください。
→ 当院の大腸カメラ検査
当院は、尼崎市・阪急塚口駅北口から徒歩1分。内視鏡専門医が、精密観察と早期治療を重視した診療を行っています。
また、伊丹市・西宮市・豊中市・大阪市(淀川区/西淀川区)など隣接エリア、阪急西宮北口・武庫之荘・園田・神崎川・十三・稲野・新伊丹・伊丹など周辺駅からのアクセスも良好。
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