尼崎市の阪急塚口駅前いのうえ消化器内科・内視鏡クリニックです。

当院では、胃カメラ・大腸カメラを鎮静剤（眠る薬）を使って苦痛を少なく行うことができます。
ところが、普段睡眠薬を服用している方では、鎮静剤の効き方が通常と異なる場合があります。
「いつも通りの量なのに眠りにくい」「効きすぎて覚めにくい」など、個人差が出やすくなるのです。
この記事では、睡眠薬常用者で鎮静剤の効き方が変わる理由と、安全に検査を受けるためのポイントを解説します。

◆ 鎮静剤と睡眠薬の共通点

内視鏡検査で使う鎮静剤は、脳の「GABA受容体」という部位に作用し、神経の興奮を抑えてリラックス・眠気をもたらします。
実は、睡眠薬の多く（ベンゾジアゼピン系、非ベンゾ系）も同じGABA受容体に作用します。
つまり、鎮静剤と睡眠薬は似た仕組みで働く薬といえます。

◆ 睡眠薬常用で鎮静剤が効きにくくなる理由

① 耐性（たいせい）の形成

睡眠薬を長期間服用していると、脳がその薬に慣れてしまい、GABA受容体が鈍く反応するようになります。
これを「耐性」と呼び、同じ量では効きにくくなる状態です。
鎮静剤も同じ受容体に作用するため、睡眠薬に慣れている方では鎮静剤の効果も弱まりやすくなります。

② 肝臓での代謝の亢進

睡眠薬の一部（特にベンゾジアゼピン系）は、肝臓の薬物代謝酵素（CYP系）によって分解されます。
長期服用によりこの酵素が活発になり、鎮静剤の分解も速くなるため、効果の持続時間が短くなることがあります。

③ 脳内受容体の変化

長期的にGABA系の薬を使用していると、脳内の受容体構造そのものが変化し、薬の感受性が低下することがあります。
この場合、鎮静剤の反応が不安定になり、「効かない」と感じる一方で、「急に効きすぎる」こともあるため、投与量の調整が重要です。

◆ 逆に「効きすぎる」場合もある

一部の睡眠薬（ゾルピデム〈マイスリー〉やエスゾピクロン〈ルネスタ〉など）は、血中濃度や併用薬によっては鎮静効果を増強することがあります。
また、高齢者では肝機能・腎機能が低下していることが多く、薬の排出が遅れて長く眠ってしまうこともあります。
そのため、服用薬の種類や年齢、体格に応じた調整が必要です。

◆ 鎮静を安全に行うための対策

• ・普段服用している睡眠薬の種類・量・服用期間を必ず申告する
• ・検査前日はいつも通りの時間で服薬し、それ以外の睡眠補助薬を追加しない
• ・鎮静剤の投与は最小限の量から段階的に調整
• ・検査中は酸素投与・血中酸素モニターを装着し、安全管理を徹底
• ・検査後は十分に休憩をとり、車の運転は控える

◆ 当院での取り組み

当院では、鎮静剤の投与量を患者さんごとに細かく調整し、睡眠薬や安定剤を服用中の方にも安全に検査を受けていただけるよう配慮しています。

◆ まとめ

睡眠薬を常用していると、脳や肝臓の反応が変化し、鎮静剤の効き方に影響します。
効きが弱くなる場合もあれば、逆に強く出る場合もあり、個別の調整が欠かせません。
服薬内容を正確に伝えることで、安全で快適な検査を受けることができます。
当院では患者さん一人ひとりに合わせた鎮静管理を行っておりますので、安心してご相談ください。

➡ 内視鏡検査についてはこちら

---