尼崎市の阪急塚口駅前いのうえ消化器内科・内視鏡クリニックです。

「座るだけでおしりが痛い」「急にしこりができた」「排便時に強い痛みが走る」——
そんな症状で来院される方の中には、血栓性外痔核（けっせんせいがいじかく）という病気の方が多くいらっしゃいます。
俗に「おしりの風邪」とも呼ばれ、ある日突然発症して痛むけれど、自然に治ることも多いのが特徴です。
今回は、その原因や治療、再発予防についてわかりやすく説明します。

◆ 血栓性外痔核とは

肛門の外側の皮膚の下にある静脈（血管）の一部に血のかたまり（血栓）ができる病気です。
外痔核の一種ですが、突然痛みと腫れが出るのが典型的で、感染やがんのような深刻な病気ではありません。

◆ 成因（なぜ起こるのか）

肛門の血管は座る・排便する・くしゃみをするなどの日常動作で圧力がかかりやすい構造をしています。
ちょっとした刺激で血管内に血液がよどみ、血栓ができることで発症します。

• ・排便時の強いいきみ（便秘・下痢）
• ・長時間の座り仕事や車の運転
• ・重い物を持ち上げる作業
• ・寒さや冷えによる血流低下
• ・女性では月経周期や出産後にも起こることがあります

◆ 季節性・疫学

血栓性外痔核は寒い季節（冬～春先）に多く発症します。
寒さで血管が収縮し、血流が滞ることが原因の一つです。
また、長時間のデスクワークや冷えによる筋肉の緊張も発症を後押しします。
男女差は大きくありませんが、20～50代の働き盛りの世代に多く見られます。

◆ 症状

典型的な症状は以下の通りです。

• ・突然のおしりの痛み（ズキズキ・ピリピリ）
• ・触れるとしこりを感じる
• ・出血は少ないが、排便時や座ると痛む
• ・痛みが強いが、数日～1週間ほどで軽快することが多い

発症初期は血栓がまだ柔らかく、時間が経つと固くなって腫れが引いていきます。

◆ 診断と検査

視診や触診で診断が可能です。
症状が似ている他の病気（裂肛・膿瘍・痔瘻など）との鑑別のために、必要に応じて肛門鏡で確認します。
まれに血栓性痔核と直腸出血を区別するために、大腸カメラ検査を行うこともあります。

◆ 治療

軽症の場合は自然に吸収されることも多く、保存的治療（薬と生活指導）が中心です。

内服・外用薬

• ・鎮痛剤（痛みを和らげる）
• ・抗炎症坐薬・軟膏（炎症や腫れを抑える）
• ・血流改善薬（血栓の吸収を助ける）

生活指導

• ・長時間の座位を避け、こまめに立ち上がる
• ・便秘や下痢を予防する（食物繊維・水分摂取）
• ・入浴や座浴でおしりを温めて血流改善
• ・トイレでのいきみすぎに注意

外科的治療

痛みが強い場合や血栓が大きい場合には、局所麻酔下で血栓除去を行うこともあります。
処置後はすぐに痛みが軽減することが多く、日帰りで可能です。

◆ 再発予防のポイント

• ・冷え対策（冬場は下半身を温める）
• ・適度な運動で血流を促す
• ・便通のリズムを整える
• ・長時間のデスクワーク時は定期的に休憩を

◆ まとめ

血栓性外痔核は突然痛みが出るものの、命に関わる病気ではありません。
しかし、強い痛みや再発を繰り返す場合には、薬や処置で早めに対処することが大切です。
「おしりが痛いけれど恥ずかしくて受診しづらい」と感じる方も多いですが、当院ではプライバシーに配慮した診療環境を整えています。
症状が出たら我慢せず、どうぞお気軽にご相談ください。

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