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こんにちは。尼崎市の阪急塚口駅前いのうえ消化器内科・内視鏡クリニックです。
健康診断などで「血清ピロリ抗体」という検査項目を目にしたことはありませんか?
今回は、この血液検査が意味するところや、「陰性高値」という注意すべき状態、そしてなぜ内視鏡検査が必要なのかについて、わかりやすくご説明します。
ピロリ菌とは?
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は胃の粘膜にすみつく細菌で、胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんの発症に関係していることがわかっています。
感染経路は主に幼少期の経口感染(家族内感染が多いとされています)で、一度感染すると自然に排除されることはほとんどありません。
血清ピロリ抗体とは?
「血清ピロリ抗体検査」は、ピロリ菌に対する抗体が血液中にあるかどうかを調べる検査です。
- ・抗体が陽性 → ピロリ菌感染の可能性あり
- ・抗体が陰性 → ピロリ菌感染の可能性が低い
と考えられていますが、注意が必要なのはこの検査だけでは正確な感染の有無や胃の状態は判断できないという点です。
「陰性高値」に注意
ピロリ抗体の数値が「陰性」でも、基準値ギリギリの数値(例えば3.0〜9.9 U/mL程度)の場合には、「陰性高値」として再評価が推奨されることがあります。
この状態は、
- ・過去にピロリ菌に感染していた
- ・除菌後、まだ抗体が残っている
- ・現在も少量の菌が残っている可能性がある
などの可能性があり、抗体陰性だから安心とは言い切れないのです。
除菌後も抗体はしばらく陽性のまま
ピロリ菌の除菌に成功しても、血清抗体はしばらく陽性のまま残ることがあります。
そのため、「抗体陽性=感染中」と誤解してしまうケースもあります。
実際には、除菌後も数ヶ月〜1年以上は陽性が続くこともあり、抗体の値の推移や内視鏡での胃の状態を踏まえて評価する必要があります。
抗体検査だけでは不十分|内視鏡検査が必要な理由
血清抗体検査はあくまで「スクリーニング検査」であり、以下のようなリスク評価には不向きです:
- ・胃がんのリスクが高い萎縮性胃炎の有無
- ・現在の胃粘膜の状態(発赤・萎縮・腺腫など)
- ・過去の除菌歴・除菌の効果
こうした情報を正しく評価するには、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が不可欠です。
特に以下のような方は内視鏡検査が強く推奨されます:
- ・血清抗体が陰性高値だった方
- ・抗体陽性だが除菌歴が不明な方
- ・胃の不調や胃がんの家族歴がある方
ピロリ菌除菌には必ず内視鏡を
ピロリ菌の除菌は、胃がん予防にもつながる重要な治療です。
しかし、除菌を行うには以下の確認が必要です:
- ・本当に感染しているか(他の検査との併用)
- ・胃がんや前がん病変がないか(除菌前に必ず内視鏡)
当院でも、除菌治療を希望される方には必ず内視鏡検査を受けていただいています。
除菌後の胃の状態の確認にも、定期的な内視鏡フォローが大切です。
まとめ|抗体の数値だけで安心せず、胃カメラを受けましょう
血清ピロリ抗体検査は便利な一方で、数値の解釈やタイミングによっては誤解を招くこともある検査です。
- ・陰性でも安心できない「陰性高値」
- ・除菌後も続く「抗体陽性」
- ・胃がんのリスク評価には内視鏡が必要
当院では、ピロリ菌感染の有無だけでなく、胃の状態やリスクもふまえて総合的に判断します。
胃がん予防の第一歩として、ぜひ一度ご相談ください。