
【最終更新日:2026年7月23日】
尼崎市の阪急塚口駅前いのうえ消化器内科・内視鏡クリニックです。
外来では、「ヨーグルトを毎日食べれば腸にいいですか」「毎日便が出ていれば大腸は大丈夫ですか」「症状がないのに胃カメラや大腸カメラを受ける必要がありますか」と尋ねられることがあります。
胃腸に良い食べ物や生活習慣には一定の傾向がありますが、誰にでも当てはまる一つの正解があるわけではありません。便秘の方に合う食物繊維が、下痢やお腹の張りがある方には負担になることもあります。発酵食品を食べて調子がよくなる方もいれば、ガスが増えてつらくなる方もいます。
私が内視鏡検査を20,000件以上行い、外来診療を続ける中で感じるのは、胃腸の調子が良い方は、特別な健康法を一つだけ続けているのではなく、自分の普段の状態と変化をよく知っているということです。
この記事では、以前ご紹介した「胃腸の調子が良い人の4つの共通点」を見直し、日常で取り入れやすい7つの習慣に広げます。あわせて、生活改善だけで様子を見ず、受診や検査を考えたいサインもお伝えします。
そもそも「胃腸の調子が良い」とは?
医学的には、「毎日必ず排便がある」「一度も胃もたれをしない」といった単一の基準で胃腸の健康を判断することはできません。
私が診療で大切だと考えているのは、次の3点です。
- ・食事、仕事、睡眠を大きく妨げる症状が続いていない
- ・自分にとって通常の便通や食後の状態を把握できている
- ・いつもと違う変化や検診異常を放置していない
つまり、胃腸の調子が良いとは「症状が完全にゼロ」というより、症状に振り回されず、変化があれば適切に対処できる状態と考えると分かりやすいでしょう。
胃腸の調子が良い人に共通する7つの習慣
1.睡眠と食事の時間を大きく崩さない
胃腸は、食事と空腹、活動と休息のリズムに影響を受けます。毎日を分刻みで同じにする必要はありませんが、夜遅い食事、睡眠不足、休日の大幅な寝だめが続くと、胃もたれや便通の乱れを感じる方がいます。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は個人差を踏まえながら6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保し、目覚めたときに休まった感覚を高めることが示されています。まずは就寝時刻だけでなく、夕食時刻と起床時刻を大きくずらさないことから始めると続けやすくなります。
2.「胃に良い物」を探す前に、食べる量と速さを見直す
食材選びに気を配っていても、短時間にたくさん食べる、満腹になるまで食べる、夕食後すぐ横になる、といった習慣があれば胃に負担がかかります。胃もたれや逆流症状がある方では、まず一口ごとによくかみ、腹八分を意識し、就寝直前の食事を避ける方が変化を実感しやすいことがあります。
反対に、体重減少や食欲低下がある方へ食事量を一律に減らすことは勧められません。食べられない状態が続く場合は、生活改善だけで済ませず原因を確認します。
3.食物繊維や発酵食品は「自分に合う種類と量」で取り入れる
食物繊維は便通を整える助けになりますが、多ければ多いほどよいわけではありません。便秘の方でも急に量を増やすと、お腹の張りや痛みが強くなることがあります。水溶性食物繊維を含むオートミール、大麦、果物などを少量から試し、水分も一緒に取る方法が現実的です。
日本消化器病学会の過敏性腸症候群(IBS)診療ガイドラインでも、食事、食物繊維、プロバイオティクスは検討されています。ただし、どの食品が合うかには個人差があります。ヨーグルトや納豆などで膨満感や下痢が悪化する場合は、「体に良いはず」と無理に続けず、食べた物と症状を短期間記録して関係を見てみます。
低FODMAP食などの制限食は、一部のIBS症状に役立つ可能性がありますが、自己流で長期間続けると食事が過度に偏ることがあります。必要な場合は、医師や管理栄養士と相談しながら、制限後に食品を戻して自分の苦手な物を確かめる方法が適しています。
4.運動は完璧を目指さず、座り続ける時間を減らす
適度な身体活動は、便通だけでなく睡眠やストレス対処にもつながります。運動習慣がない方が、急に毎日1時間走る必要はありません。昼食後に10分歩く、階段を使う、デスクワークの合間に立つなど、今より少し動くことが第一歩です。
厚生労働省の身体活動・運動ガイド2023も、個人差を踏まえて可能なことから始め、座りっぱなしの時間を長くしすぎないよう勧めています。持病や膝・腰の痛みがある方は、無理のない方法を主治医と相談してください。
5.「毎日出るか」より、自分の便通の基準を知る
排便回数には個人差があります。毎日出ないだけで便秘とは限らず、毎日出ていても強くいきむ、残便感がある、硬い便しか出ない場合は便秘に当たることがあります。
回数だけでなく、便の硬さ、色、出しやすさ、腹痛との関係を見ておくことが大切です。いつもの状態を知っていれば、「急に細くなった」「下痢と便秘を繰り返すようになった」「黒い便や赤い血が混じる」といった変化にも気づきやすくなります。
6.ストレスをなくすのではなく、胃腸との関係を知る
緊張すると腹痛や下痢が起こる、忙しい時期に胃が痛むという経験は珍しくありません。脳と消化管は互いに影響し合っており、日本消化器病学会も、ストレスが過敏性腸症候群の発症や悪化に関係すると解説しています。
これは「気の持ちよう」でも、ご本人の弱さでもありません。ストレスを完全になくそうとするより、忙しい日、睡眠が短い日、外食が続いた日など、症状が出やすい条件を知ることが役立ちます。入浴、散歩、趣味、短い休憩など、自分が戻りやすい方法をいくつか持っている方は、症状の波にも対応しやすくなります。
7.症状だけで判断せず、薬・ピロリ菌・検診歴を確認する
胃腸症状は生活習慣だけでなく、鎮痛薬、鉄剤、マグネシウムを含む薬、抗菌薬、糖尿病や肥満症の治療薬、サプリメントなどが関係することがあります。自己判断で中止せず、症状が始まった時期と薬を開始・変更した時期を医師や薬剤師へ伝えてください。
また、胃がん予防ではピロリ菌の確認が重要です。国立がん研究センターが日本人を対象とした研究をまとめた評価では、ピロリ菌除菌群の胃がんリスクは非除菌群に比べて相対リスク0.42でした。研究対象や背景の違いがあるため、この数字を個人の発症確率としては使えませんが、除菌でリスクが低下する根拠は確実と評価されています。
一方、除菌後も胃がんリスクがゼロになるわけではありません。ピロリ菌の検査歴、除菌歴、これまでの胃カメラ所見が分からない方は、一度整理しておくことをお勧めします。
内視鏡医として強く感じること|症状の強さと病気の重さは一致しない
京都大学病院、大阪国際がんセンターなどで診療に携わり、内視鏡検査を20,000件以上経験してきた中で、繰り返し感じることがあります。それは、症状の強さと、見つかる病気の重さは必ずしも一致しないということです。
強い腹痛や下痢が続いていても、内視鏡では炎症や腫瘍が見つからず、過敏性腸症候群など消化管と脳の相互作用が関係する病気であることがあります。反対に、ほとんど症状がない方から、ピロリ菌による胃炎、大腸ポリープ、早期の胃がん・大腸がんが見つかることもあります。
だからこそ、症状を我慢できるかどうかだけで判断するのではなく、年齢、症状の続き方、体重変化、貧血、便潜血検査、家族歴、過去のポリープやピロリ菌の状況を合わせて考えます。京都大学医学博士として研究に取り組んだ経験も踏まえ、当院では「とりあえず薬を飲む」「すぐ全員に内視鏡をする」のどちらか一方ではなく、検査で確認すべき方を見極めることを大切にしています。
健康なときの検査は、全員一律ではありません
以前の記事では「健康なときでも定期的な胃カメラ・大腸カメラが大切」と記載していました。大切な考え方ではありますが、より正確には、年齢、検診結果、症状、既往歴、家族歴に応じて、適切な検査を選ぶことが重要です。
国立がん研究センターのがん検診情報では、症状のない方を対象とする対策型検診として、次の方法が示されています。
- ・胃がん検診:50歳以上、2年に1回、胃部X線検査または胃内視鏡検査
- ・大腸がん検診:40歳以上、1年に1回、便潜血検査
便潜血検査が1回でも陽性だった方は、もう一度便潜血検査をして確かめるのではなく、大腸カメラによる精密検査を検討します。また、血便、黒色便、貧血、続く腹痛、便通の急な変化などがある場合は、検診の対象ではなく診療として原因を確認します。
胃カメラや大腸カメラの適切な間隔は、前回の所見や治療歴によって異なります。症状がない方全員が毎年両方の内視鏡を受ける必要があるわけではありません。一方で、「元気だから」「便が毎日出るから」という理由だけで、陽性となった検診や必要な精密検査を先延ばしにしないことが大切です。
生活改善だけで様子を見ず、受診を考えたいサイン
次のような変化がある場合は、腸活や市販薬だけで長く様子を見ないでください。
- 黒い便、赤い血が混じる便、血を吐く症状がある
- 食事が通りにくい、繰り返し吐く、食欲低下が続く
- 意図しない体重減少や貧血を指摘された
- 腹痛、下痢、便秘、便が細いなどの変化が続く
- 便潜血検査が陽性だった
- 胃がん・大腸がんの家族歴や、過去の大腸ポリープがある
特に、急に強い腹痛が起こった、冷汗を伴う、何度も吐く、お腹が張って便もガスも出ない、大量に出血する、といった場合は早めの医療機関受診が必要です。
今日から始めるなら、この3つで十分です
胃腸のために、7項目を一度に完璧に行う必要はありません。まずは次の3つを確認してみてください。
- 1週間だけ、食事・睡眠・便・症状を簡単に記録する
- ピロリ菌の検査歴と、最近の胃がん・大腸がん検診結果を確認する
- いつもと違う変化が続いていれば、自己流の腸活を増やす前に相談する
当院で相談できること
当院では、胃痛、胃もたれ、胸やけ、腹痛、膨満感、便秘、下痢、血便などについて、症状の経過、服薬、検診結果、ピロリ菌歴を確認し、必要に応じて血液検査、腹部超音波検査、胃カメラ、大腸カメラなどをご提案します。
「生活習慣を変えて様子を見てよいのか」「検査を受ける段階なのか」が分からないという相談でも構いません。検査ありきではなく、患者さんごとの背景を整理して、次の行動を一緒に考えます。
まとめ|胃腸を整えるとは、自分の変化に気づけること
胃腸の調子が良い人に共通するのは、特定の食品や健康法ではありません。睡眠と食事のリズムを大きく崩さず、食べる量や速さを意識し、自分に合う食物繊維や運動を無理なく続け、便通と症状の変化に気づくことです。
そして、生活習慣と同じくらい大切なのが、症状の有無だけに頼らず、ピロリ菌、検診結果、過去の内視鏡所見を確認することです。胃腸は毎日働く臓器だからこそ、完璧な腸活よりも、続けられる習慣と必要なときに検査を受ける判断を大切にしていただきたいと思います。
参考文献・参考情報
- ・厚生労働省.健康づくりのための睡眠ガイド2023.
- ・厚生労働省 e-ヘルスネット.「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:成人版.
- ・日本消化器病学会.過敏性腸症候群(IBS)診療ガイドライン2020.
- ・Lacy BE, et al. ACG Clinical Guideline: Management of Irritable Bowel Syndrome. Am J Gastroenterol. 2021;116:17-44.
- ・国立がん研究センター.日本人におけるヘリコバクター・ピロリ除菌と胃がん罹患の関連について.
- ・国立がん研究センター がん情報サービス.がん検診について.
- ・国立がん研究センター がん情報サービス.胃がん検診について.
- ・国立がん研究センター がん情報サービス.大腸がん検診について.
当院は、尼崎市・阪急塚口駅北口から徒歩1分の立地にあり、通勤やお買い物ついでにも立ち寄りやすい環境です。
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JR猪名寺駅、塚口駅、尼崎駅や立花駅からはバスでのご来院も便利です。
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